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A.W.Aで使用しているデニム生地は、糸の染色と同じ、岡山県井原で作られています。この周辺は、世界でも群を抜いたクオリティで知られる日本産デニムのなかでも、製織の中心となっている土地です。現在はコンピューター制御による高速織機が主流となっていますが、A.W.Aではあえて、旧式の力織機を使ったオリジナルデニムをオーダーしています。最新式織機はその構造上、タテ糸にテンションを掛けないと織ることができないため、表面が均一的なツルツルの仕上がりなるのが特徴です。一方“シャトル織機”とも呼ばれる力織機は、現代の織機の約6分の1という抵速度でしか織ることができない極めて非生産的な機械ですが、タテ糸を強く張らずに織ることが可能で、ゆっくりと時間を掛けて織る分、ヨコ糸の打ち込みが強くなり、結果として凹凸感のあるゴワゴワとした厚い生地が生まれます。このザラつきこそがヴィンテージのような野趣溢れる素材感の理由、そして味わい深く美しいタテ落ちには不可欠な要素なのです。事実、ヴィンテージデニムは、こうした力織機で製造されていました。しかし1970年代になり、生産性に長け安定した品質を保つことができる革新織機が登場したことよって、あまりにも効率の悪い力織機は現場から姿を消し、既に大多数が廃棄処分されてしまっています。そのため今日では、ほとんどが残っていない希少なものとなっているのが現実です。

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1960~1980年代中頃までの力織機で織り上げられるA.W.Aのデニムは、革新織機のおよそ半分しかない29インチ幅で、1日フル稼働させても50m織るのが限度です。そこから作ることができるジャケットやジーンズは、ごく少量になってしまいます。また年代物の機械のため、壊れやすいのも大きな難点。製織場の中は機を織る轟音が響き、わずか30cmの近さでも声が届かないほどです。そこで働く職人たちは織機1台1台の個性を知り尽くしており、そのわずかな音の違いを察知し、織機の調子を見極めます。まるで織機と会話を交わしているかのように行われる繊細な調整やメンテナンスは、日々の欠かせない仕事。もちろん壊れても交換できる新しい部品はなく、ジャンクになった古い織機のパーツを再利用、それすら入手できない場合は図面を引き、鉄工所に発注して補修するしかありません。このように、オートメーション化されたハイテク織機の幾倍も生産性に劣り、手間隙を要し、熟練の職人のみがもち合わせる経験や勘を頼りにすることでしか稼働しない力織機ですが、A.W.Aが追い求める古き良き風合いは、これをもってしか表現し得ないのです。また革新織機には存在しない生地の端に付くセルビッジ。白地に赤糸を入れたこの通称“赤ミミ”は、力織機で織られた証しである同時に、デニム生地に対する私たちのこだわりを伝える代弁者でもあるのです。

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